10月25日(水)シークレット・アイズ(あなたは隠された瞳の中の真実をいくつ掘り出せる?)

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 映画は痛みという感情にあふれている。だから、現実の世界で苦しい時に映画に触れると、必要以上に人物の痛みに敏感になってしまう。

 

 この映画を観ているとき、そういう状態だった。

 映画の中で同僚の子供が殺害され、同僚達が事件捜査に乗り出すが、彼らが属する警察やFBIという組織が犯人を守る側になっている、その状況そのものがあまりにつらく、私はこの映画の違う側面をみようと必死になってしまった。

 

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 その結果、私はこの作品を事件後13年間を経ても犯人に固執する執念の刑事ドラマとしてみるのではなく、犯人に同じくらい固執しつつ、同僚である女性検事(ニコール・キッドマン)に想いを寄せる男性(キウェテル・イジョホー)の物語として観た。

 

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 物語でニコールは検事に昇進する才媛で、キウェテルはスラム育ちの秀才のFBI捜査官役だ。冒頭で同僚(ジュリア・ロバーツ)の娘が殺人事件に巻き込まれ、彼女の事件を追うことになる。 身内の事件を執念深く追い続けるのはキウェテルで、彼はFBIを辞職してからも、犯人を追い続け有力な手がかりを手みやげに古巣に舞い戻り、二人の元同僚と再会する。二人の女性は対照的な日々を過ごしており、それは外見に現れていた。ジュリアは娘を失い、老け込み、ニコールは昇進し、相変わらず美しく輝いていた。

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 キウェテルは犯人に固執するのを同じくらい、ニコールに対する好意を継続し、13年度も秘めていたが、初めて会ったときにすでに婚約していたニコールにその想いを打ち明けることはできなかった。そのもどかしさはいらいらするほどで、ニコールはもちろん彼の気持ちに気がついているので、再会後、彼にこんなことを言う。

 

「あなたは鈍い」と。

 

 ニコールは夫と良好な関係を結んではいるが、それは夫が彼女を理解しているからだという。それが彼女が今の夫と結婚した理由で、今も配偶者である理由なのだ。

 その夫という男性はニコールがキウェテルを夜に自宅に招き、リビングで親密そうに二人で話をしているのを目撃しても微笑んだまま二階にあがっていってしまう。

 これが彼女を理解しているということなのだろうか。

 ニコールはこの映画のなかで、仕事を精力的にこなす野心的な女性として描かれている。それが伝わってくるかというと、実はそうでもないのだが、そういうポジションにおり、キウェテルはそんな彼女に強く惹かれながらも彼女の立場や気持ちを配慮するあまり、それから彼女から拒絶されることを臆するあまり、長い間、気持ちを打ち明けられないでいる。

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 ニコールが13年後に彼に言ったとおり、もしかすると彼女は強引な男が好きなのだろうか。彼女が許容する男は、彼女を好きという積極的な男なのだろうか。私はそれだけれはない、と思った。

 夫が理解している。

 それは、こういう意味ではないか。

 つまり、彼女は男よりも仕事を愛する女であり、それを理解してくれる男性であれば、私はあなたの妻になる、とそういう関係がニコールと夫の関係ではないのだろうか。

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 それとも、そんなことはニコールと夫の相性がそうなのであって、キウェテルとであれば違ったのだろうか。

 仕事を愛する女性は男性を愛するよりも愛されることを選ぶのだろうか。

 この映画を観ているとき、映画の大どんでん返しはより悲劇的なものになるのだが、私はキウェテルがニコールに言われた言葉のほうが悲劇に思えた。

 キウェテルが演じた男性が持つ執念というエネルギーをもし、ニコールに向けられていたら、二人の結末は違ったものになっていたのではないだろうか。

 シークレット・アイズ。

 三人の男女がそれぞれに言葉に出さないでいる真実をどれだけ掘り出せるのか、それは一部誰にもわかる形で開示されるが、あとのいくつかは観客の想像にゆだねられる。