10月15日(日)スプリット(17)やたら子供だましを丁寧に描くシャマラン節炸裂!

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 久ぶりに観たシャマラン監督作品。

 どうでしょうか。笑

 なんだか、最近こういう感覚が多くて、もう映画見るのをやめようかと思うんですけど、「ジュラシック・ワールド」を見て、ウキウキしたり「七人の侍」でうるっときちゃう自分はやっぱり映画好きなんだと思うのです。

 そういうわけで、映画というのは海より深い芸術性と、太陽系よりも広いエンタメ性を持つメディアなのだと思うことで、「スプリット」を楽しむしかないな、という感じです。

 

 ストーリー

 女子高生三人が、見知らぬ男に拉致された。

 監禁場所は窓がない地下室。

 三人の前に現れた眼鏡をかけた男は彼女たちを餌にするという。

 そして、男はドアを閉めて彼女たちの部屋に入室するたびに雰囲気が変わる。一度など、女性のような声色を使い、スカートまで履いていた。かと思うと、子どものようにはしゃいだり、喜怒哀楽の激しい姿へと変貌する。

 男が多重人格者だと見抜いたケイシーは、男の油断をさそい脱出を試みようとするが、すぐに大人の交代人格が彼女たちを連れ戻してしまう。

 一方で、男の中の人格のひとりが、主治医であるカレンに頻繁にメールを送っていた。ビーストがやってくる。二十四番目の超人的な人格の出現を恐れる誰かが助けを求めていると感じたカレンは男と対話を続けるが、ついに彼の秘密に触れてしまう。

 24番目の人格。それは、もはや人でさえなく、壁を走り、鋼のように固い皮膚を持つ、ビーストという名の獣だった。

 彼は、そう。虐待によって分裂した男を守るために出現した交代人格が待ち望んだ、超人だった。

 

 スタッフ&キャスト

 監督はご存じナイト・シャマラン監督。

 

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 シャマラン監督はシックス・センスで世界的な評価を受け、その後アンブレイカブル」「サイン」と話題作を世に送り出しましたが、「レディ・イン・ザ・ウォーター」で大赤字を出してしまい、その後しばらくはり制作サイドに専念し、この作品で久しぶりに「シャマラン」節を見る映画と再会できたファンも多いのではないでしょうか。

 詳しくは後述しますが、なんというか一言で言うと、この監督の本質はおちゃめでB級。

 

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(おちゃめシャマラン監督w

(内緒にするほど、今作は内緒がないでしょうよ(笑))

 

 個人的には私は彼の作風が大好きで、その本質はスティーブン・キングと同質ではないかと思っています。子供だましのテーマを本気で緻密に人間ドラマとして成立させるというSF作家を目指してホラー作家になってしまったキングの編み出したモダンホラーというジャンル。

 これと同手法でいつのまにやらB級が本質なのにA級の映画監督になってしまい、そりゃもちろん迷走するでしょうという立ち位置。私は大好きです。というわけで、今回のスプリットもだいぶ迷走しつつ本質はB級という相変わらずさ。

 

 主演はジェームズ・マカヴォイ

 あからさまに「24人のビリーミリガン」を意識した24番目の人格ではビーストに予定通り変身してしまう多重人格者を演じますが、人格が変わる演技はすばらしく、しかし全然戦慄しないあたりは、「サイコ」のようにホラーではなく、アメコミ路線の演出だからなのか。

 一つの作品で変身をする映画にダニー・ボイル「トランス」にも出演。カメレオンどころか、同じ役で分裂する人格を演じる巧みさは「スプリット」でも健在で、アクションというより微妙な心理の襞を演じ分ける俳優の伝統はやはり近代演劇発祥の元祖イギリス由来なのでしょうか。

 個人的にはイケメン俳優だと思っていますが、この人にはコミカルで間抜けな役ほど映える持ち前の清冽さがあるので、逆にシリアスだと遊びがないと、感じてしまうのは私だけでしょうか。小柄という噂で共演者にも配慮が必要だとか、どこかで読んだことがあります。「ヴィクター・フランケンシュタイン」の共演者はあの魔法使いハリーことダニエル・ラドクリフ。うん、たしかに長身って感じじゃないよね、彼。

 

 そしてヒロインはアニャ・テイラー=ジョイ。くせのある美人ですが間違いなくあと10年後には美女に変身するお顔立ち。前作ではここでもレビューした「モーガン」で殺人兵器を演じました。

 今作では虐待された経験から、人を疑いの目で見るトラウマを抱えた女子高生です。頭脳プレイと幼少期に学んだショットガン片手に変態男から逃亡しようと奮闘します。お顔のパーツが大づくりで、整いすぎた顔のせいか表情のバリエが少なく感じたのは、全面恐怖と不安の怯える役どころだったからだと思いたい、そんな美人なアニャです。

 

 

 レビュー

 なんというか、もうシャマラン監督らしいと言えばらしい「サイン」「ヴィジット」と並ぶ「思わせぶり」なまま「何もなく終わる」映画の代表とでもいうのでしょうか。

 ネタバレも何でもなく、多重人格者が最後はラストの人格である超人になるという話です。

 このラストの人格の存在は物語の冒頭から例によって伏線が丁寧にはられ、しかし張られすぎているから、ラストまでとくにはらはらすることなく、予定通りラストの人格が現れるという流れになっています。

 なので、このラストに私は「うん、それで?」と言いたくなるのですが、どうやら「スプリット」はすでに続編が決定しているようです。

 え、続編。やめたほうがいいんじゃ……なんて思うのは、逆に心底シャマラン監督が好きな私だけかもしれませんが、このスプリットでは実はラストに同監督作の「アンブレイカブル」の主人公だったデイヴィッド・ダンがカメオ出演しています。

 

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アンブレイカブル」と言えばブルース・ウィルス。っていうか、シャマランと言えば「シックス・センス」。「シックス・センス」といえば、ハーレイ・オスメント君とブルース・ウィルスということで、シャマラン監督にとっては相棒のような俳優でしょうか。

 というわけで「アンブレイカブル」で、悪人を斬りまくる覆面ヒーロー(見た目ではなく行動がね)になったブルース・ウィルスことデイヴィッド、そして彼をヒーローに仕立てた悪者イライジャことミスターガラス(サミュエル・L・ジャクソン)がアニャとマカヴォイとともに次作で活躍するそうです。次作でこそ、シャマラン監督はアクション映画監督に変身するのでしょうか。

 そうなると、ちょっと寂しいな。

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シックス・センスよりハーレイ君とブルース)

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(ハーレイ君、利発そうで人のよさそうな少年時代)

 

で、いまこれ

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(ネタですから、、さらっと流しましょう(笑)

 

 で、肝心の今作なんですが、いつにもまして思わせぶりなわりに、派手なシーンがなく主人公たちの感情の襞を丁寧に描いています。

 このあたり、言ってみればアンバランスで、多重人格者が最終的には超人的な悪者になるというアメコミでいうラスボスのバックストーリーみたいな話にも関わらず、やたら丁寧かつ緻密に描いているのが今作です。

 やっていることは、緻密な心理ドラマのような感じですが、言ってることは「こうして超人的なパワーを持つ悪者が生まれたのだった」なんですよ。

 このあたり、私は見ていてスティーブン・キングを思い出しました。

 キングとの共通性はシャマラン監督の「サイン」「ヴィジット」を見て、わかりすぎるくらいわかってしまうのですが、この両作品に共通しているのは、宇宙人による侵略、人類ののっとりなんですね。この宇宙人ののっとりという子供だましのテーマはアメリカ産SFでいやというほど量産されましたし、キングはこの宇宙人の侵略というある意味で子どもじみたテーマを「IT」や「ドリーム・キャッチャー」でやけに大人が読むような文学的文体で、文庫本4冊という長さで展開しています。もう、ほんとあきれてものが言えないくらいです。

 笑。

 スティーブン・キングの功績文学史上、はじめてモダン・ホラーというジャンルと確立させたことです。

 キング以前にはホラーとは怪談のような小話のようなもので、ネタありき。人間ドラマが入ったことはありませんでした。しかし、キングは怪談・ホラーという短編ばかりのジャンルに、文学的ともいえる人間ドラマ、人間の葛藤を持ち込みました。

 

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(すげえ、怖い。。ピエロ恐怖症になるよね)

 

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(ぎゃああああああああ!!!!)

 

 

 わかりやすいところでは「シャイニング」。

 これは、キューブリックにより映画になったいわゆる幽霊ホテルの話ですが、ここでは幽霊ホテルの冬季管理人となった親子の葛藤(というか、父親の葛藤)がやがて、ホテルに取りついた悪霊たちに利用され、親子間、夫婦間の危機へと発展させられ、ホラー的展開になるというつくりです。

 つまり「シャイニング」では、やっていることは、人生に失敗したある一人の男が、再起をかけて人生の出発をきるためホテルの冬季管理としてバイトをする、というものですが、言っていることは「幽霊ホテルで怖い思いをする親子」なのです。この人間的なテーマを「子供だましのホラー」で本気になって語っているのがキングの定石とした手法であり、同時にそれはそのままシャマラン監督の手法でもあるのではないかと言うのが私の直観です。

 

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(シャイニング。定期的に観たくなる映画のひとつ)

 

 じゃあ、このテーマと語り方のアンバランスさは何が問題なのか、と言うと、観客に肩透かしを食らわせつつも食らわせた本人はあまりそのアンバランスさに気がついてないということだと思います笑

 それは実はシャマラン監督の成功作「シックス・センス」にも表れているのですが、あの映画もほとんど「シャイニング」だったりします。

 主人公の少年にしか幽霊が見えない状況もさることながら、少年が見える幽霊について周囲が中盤まで少年の持つ精神分裂的な幻覚だと誤解しているところ、親子の和解がサブテーマになっているところ。そしてそのサブテーマこそが、作者の本質であるところ。キングもシャマランもホラーは好きだけれど、いわゆる怖い映像やモンスターとしてのゴーストを全面に押し出すのではなく、あくまでも身近な血縁者にさえ理解されない孤独を抱えた主人公の問題を取り扱ったところに、この両者の作家性が現れています。

 ゴーストに怖がるストーリーを描くのであれば、もっと違う描き方があります。キングなどはキューブリック監督の「シャイニング」で、親子の葛藤と和解があまりにも無視されていることを理由にTVドラマ版で原作に忠実に映像を取り直しています。

 で、私はこういうホラーとヒューマンドラマの抱き合わせは好きなのですが、ホラー好きからは「中途半端」であり、「恐怖の感じられない」見せ場がつづき、ヒューマンドラマファンからすると「怖すぎてみられない」となりかねない危険があるのでは、と思います。

 シャマラン監督の本質がB級にある理由はどちらにも転べないこうした中途半端な作風ではないかと思います。この傾向は「シックス・センス」以後激しくなっていくのですが、「サイン」では宇宙人侵略のスペクタクルになりかねないところを、テーマを家族の和解にシフトしたせいで宇宙人は控えめな存在となり、全体として「べつに親子関係の悪化のネタを宇宙人」にしなくてよかったんじゃないのと、思わせてしまう要因になっています。でも、私は内心、シャマラン監督、私はわかる。宇宙人侵略もの、やってみたかったんだよね。わかるよ。だって、そういうテーマ大好きだもんね。と、言ってあげたい。このあたりはキングの作品を読んでいても溜息が出ちゃうところなのですが、

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(サイン ミステリーサークル なつかしすぎ)

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(映画サインより。。ほんと、シャマラン監督っておちゃめだよね。大好きw)

 

たとえばキング原作の「ドリーム・キャッチャー」

 毎年同窓会を山小屋で開催している中年男たち4人。

 スタンドバイミーの続編を彷彿とさせる冒頭、彼らの近況の様子がまるまる文庫本一冊で語られ、二冊目の終わりごろでしょうか。いきなり宇宙人侵略ものに話はシフトして、わけがわからなくなるあたり、もうしっちゃかめっちゃかですし、これがキングだと、わかってるだけに諦めるしかないというか。でもわかるけれど、やっぱりテーマと語り手法にアンバランスさを感じてします。

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ドリームキャッチャー 出だしはいいんだけどね(笑)

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(同窓会。。。こいつらほとんど死ぬんじゃなかったけ?(笑))

 

 

 さらに言えば、IT。

 最近リメイクされて、話題になっていますが、あれだって当初は完全なホラーだと思いますよ。有名な下水管からピエロがでてくるっていう。でもあれ、ホラーじゃなくて、宇宙人ものですから。でも、まさかピエロが宇宙人って、そういうのあり?と唖然とするわけです。あのまま、ホラーにしてくれたらよかったのに、なんて私は子ども心(当時はすでに大学生でしたが)思ったものです。

 シャマラン監督に話を戻しますが、彼の中にはどうやら幽霊が見えたり、怪我をしなかったり、怪我をしすぎたり、と能力をとわず異能者に対する愛着があるようで、これはシックス・センス」ではじまり「アンブレイカブル」で発展され、今作「スプリット」で役者をそろえた感があります。

 後者2作品は完全に異能バトルに備えた作りですが、 「アンブレイカブル」でヒーロー誕生の描き方がかなり地味で、悪者との闘いのシーンがアクションというよりただの取っ組みあいにしか見えなかった以上、シャマラン監督にいわゆる「アメコミ」が撮れるとも思えないし、撮ってほしくないと思います。さらに言えばアメコミヒーローものはシャマラン監督がお休みしているあいだに、良作が量産されており、今更感がありありです。

 例によってヒューマンドラマに舵をとるのか、それとも完全なアクションシーンを入れてみるのか。

 私だったら、「アンブレイカブル」で重度精神病院に監禁されたイライジャを「羊たちの沈黙」のレクターよろしく安楽椅子探偵兼首謀者として活用し、さらに今作のヒロイン・アニャをビーストの悲恋相手として配置します。

 こうなったら、ロミジュリでしょう。ああ、やっぱりそう思うとスプリット次作はめちゃおもしろくなりそうですね(笑)

 

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(シャマラン監督のお茶目さは、どの映画でもほとんどちょい役で出ていて、彼を探すのが楽しみっていう。ラブシャマラン~w ずっとついていきますwあなたのB級に!!)

(最近みたヴィジットっていう地味でカメラ酔いするC級宇宙人ものも、なんかけっこうよかったですよw)

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全編超絶退屈ですが、エンドロールでなんだか見てよかったかも、と思わせる

 ラブリーなつくりw)