8月22日(火)8月のベスト映画『メッセージ(16)』

 

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 この映画、めちゃくちゃ地味です。

 ある日突然、バカウケにくりそつな半円形の巨大な宇宙船が地球に12機飛来し、何をするわけでもなく空中に浮かび続けます。

 敵対するでも友好的なわけでもなく、世界中の人類は混乱しつつも宇宙人(であろう存在)に疑問を抱きます。

 

いったい、何しに来たの?

 

 呼び出されたのは言語学の教授であるルイス。

 

 

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(こっちはギャグです、、、しっかしそっくりだな)

 

 

 

 バカウケ(おい……)の中にいる宇宙人が何語を使っているのか軍が途方にくれているため、言語学の権威である彼女に招集をかけたのです。

 しかし、宇宙人とはどんな奴らなのか。

 宇宙船の中に導かれると、中にいたのは巨大な七本足のイカのような生物。身長は4メートルほどでしょうか。顔も首もなく、図太い幹のような胴体から七本足の触手がのびています。

 ルイスの努力のかいもあり、やがて『ヘプタポット』と呼ばれる彼らとルイスの交流がはじまります。彼らは2メートル近い触手の先から空中に墨のような物質で円形の文字を書き、ルイスや他の学者も彼女を介して少しずつ言葉で意思疎通をしあうまでになります。

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(触手からシューっと空間に墨を履くように円形文字をかきます。 これが、おしゃれすぎる意匠)

 

 

 ヘプタボットは言葉を持たず、文字で意思疎通をする生物だったのです。

 こうして少しずつ、互いの思いを伝えあいますが、肝心の『彼らが地球に来た目的』が明瞭になりません。しかし、彼らが道具か武器か、何かを人類に与えに来たことだけはたしかなようです。

 それを、兵器、つまり征服の意だと受け取った中国軍はヘプタポット達に攻撃をしかけようとします。

 一方で、ルイスはヘプタポット達と交流するうちに、自分の中に見たことのない記憶がフラッシュバックするようになります。それは、一人の少女が成長し、やがて25歳を迎えたときに病で亡くなるというものです。ルイスは彼女のことも知らなければ、そこに登場する彼女を見守る母親らしき女性も知りません。

 しかし、ある時その少女が自分の未来の娘であると知ります。

 そのきっかけは、中国軍がヘプタポットに攻撃をしかけようとするタイミングであり、彼女がヘプタボットが地球に来た真相にたどり着こうと、単独で宇宙船(バカウケ)の中に侵入したときでした。

 ヘプタボットに導かれ、彼女はバカウケの中で、彼らの思考様式が流れ込んでくるのを感じます。彼らが地球に来た目的とは、三千年後に人類に恩恵を受けたからであり、そのお礼をするために人類に贈物を与えにきたということでした。

 地球に飛来した12機のバカウケ。

 それらは地球のあちこちに点在し、駐留していましたが、それぞれの彼らの文字を集約することで、一つの思考様式、つまり未来が見えるという能力を手に入れることができるようなのです。

  しかし、これは難題です。人類が国民国家という国の枠組みを超えて、人類として強力しあうことを意味しているからです。そんななか中国が単独でバカウケを攻撃しょうとしています。

 ここで、ルイスがいよいよめざましい活躍をします。

 ルイスはヘプタポットから一足飛びにその未来を見る透視能力を送られ、それを使って、中国の軍事力の最高指揮官である将軍と邂逅する未来に意識だけを飛ばします。そこで得た会話の内容を同じくそこで観た将軍のホットラインである携帯を通じて、話しをします。将軍はルイスとの会話により、攻撃を停止し、ヘプタポットはそれと同時にバカウケごと地球を去ります。

 残されたルイスは彼らの贈物によって、自分の未来をすべて見通します。

 それは、変えられない未来でした。

 いや、知った以上そう選択しないこともできるのでした。

 でも、彼女はヘプタポットが見せたような未来のとおり選択し続けます。

 それは、こんな物語でした。

 自分がある男性と結婚し、一人娘をもうけ、自分が未来が見える能力を持っていることから、夫の心が離れ、やがて妻子を置いて、ほかの女性に走り、そして娘は25歳になっ

たとき、病に侵され避けられない死を迎えます。そしてルイスは夫も子どもも失い、やがて一人になります。そのときルイスに残されるのはヘプタポットから受けた能力と文字、思考様式だけ。

 それでもルイスはヘプタポットのプロジェクトをこなしてきた学者であるイアンのプロポーズを受けます。

 

 

 物語はここで終わります。

 映画だけを見ると、ちょっとわかりにくいのですが、物語としてはこの流れです。

 なんとも余韻の残るラストともに、もう一度始めから見たくなること請け合いです。

 

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 原作はSF作家テッド・チャン『あなたの人生の物語』

 ルイスが娘に語りかけるという一人称ですすめられるこの小説は映像化不可能といわれ、たしかに読んでいるとそう思わされますが、映画でみると私のようなおバカにも十分理解できる内容です。

 映画としては、かなり地味な部類に入るものですが、私は画面を観ていることも忘れて、物語に没入してしまいました。

 おまけに泣いちゃったりもするわけですが、実際はこの映画に泣ける場面は皆無です。

  ただし、静かに運命を受け入れる人間というか、結局は孤独であるとか、孤独を超えた思考様式とか、うまく言葉では言えないのですが、そういう凄みがある映画であることは間違いありません。

 生命とか、時間とかは、安直なヒューマニズムとか慈悲なんかとすっとばして、必要だからそこにあるとか、存続より意義だとか、不思議に潔い感覚を与えてくれるものですが、その非情にも似た美しさがこの物語の根底にあって、私はひたすらその甘美な孤独に酔いしれていたわけです。

 で、この映画をベストだという男性がいたら、私はそれこそ何も言わずに何時間もすごしたり、時には議論しあいながらも、素敵な恋人になれるだろうな、などと思うわけです。

 この一ヶ月、この世にあふれた『未知との遭遇は敵対するヒトデだった』とか『人口知能は人間に反乱を起こす』とか、駄々洩れするありふれた憎悪と戦闘アクションに満ちた映画を観てきて、やっぱりそういうテイストの映画は退屈で陳腐だなあと思うわけです。

 そして、同時に私ってとことん地味な映画が大好きだなと思うわけです。

 この映画を観て、未知との遭遇は、人、エイリアン、AIにかぎらず、すべて創造的であり友好的であることがもっとも素敵だなあと思いました。

 この映画を観て自分が何をすべきなのかも何を求めているのかもより深く理解できた気がします。

 そういう意味で、死にそうになりながら映画を倍速で観た意味もあったのではないかと思います。

 

 『メッセージ』

 おすすめはしませんが、私の8月のベストということでお知らせします。

 そして、ついでに

 八月のワースト映画はなにかというと、来月日本公開を控えた

『エイリアン コヴェナント』

 

 リドリー・スコット監督。大好きな監督ももう年なのかな。いや、完全に年なので、否定しようがないのですが、このエイリアンシリーズはもうとても残念な仕上がりでした。私にとっては。

  一言でいうと、膨大な説明なしには見られないファンを置いてけぼりにする映画というところですが、気がかわって来月の公開後にレビューをするかもしれません。しかし、このメッセージとは対極にあるテーマを扱った物語ということだけは確実なのです。

 

 というわけで、今月の残りは、映画レビューはお休みにして、しばらくこんな感じで日記と映画の感想をいれたようなぐだぐだな感じで進めようと思います。 

 しばらく映画を観たくないというのが本音で、たまっている本を消化しようということもあるのです。

 それから、旅レビューも考えています。

 こんなブログでも映画レビューを見てくれている方には申し訳ありませんが、映画は来月からまた再開します。

 それまで、寄り道の話題にお付き合いくださいませ。