7月30日(日)チェイサー(08)韓国 うそでしょ。またしても極悪のバッドエンド。

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(チェイサー08 韓国)

 

 うそでしょ。

 またしても極悪のバッドエンド。

 それでもコミカルさが全編を覆う不思議で救いのない物語。

 それが、近くて遠い国、韓国のエンターテイメントだ。

 

【ストーリー】

 元刑事のジュンホは場末のデリヘル経営者。

 ところが、最近立て続けに雇ったデリヘル嬢が仕事に出たきり行方をくらませている。多額の手付金を回収できないまま、上層部から圧力がかかりストレスも頂点に達した頃、とある客から連絡がある。

 ジュンホは最後のデリヘル嬢のミジンを追い立てるように派遣するが、その客の電話番号に見覚えがあり、過去の履歴を調べると失踪したデリヘル嬢が最後にとった客だと判明。

 ミジンに連絡をつけ、男の家の住所を連絡しろと携帯で連絡をするジュンホ。しかし、ミジンを取った男の家のシャワールームで携帯は圏外で、窓の外はレンガで塗りこめられていた。ミジンが玄関に向かうと、すでに南京錠がかけられており、ミジンは男に両手を拘束されてしまう。そして、男が取り出したのは金づちだった。

 一方、ジュンホはミジンから連絡が途絶え、デリヘル嬢の乗り捨てた車が見つかった地区を探しはじめる。

 

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(犠牲者ミジン とてもかわいい女優さんです それがあんなめに。。。。はう)

 

【レビュー】

 

 この映画。

 韓国映画は実話ネタが好きなんでしょうか。

 これも先日レビューした「殺人の追憶」に引き続き、連続殺人ものです。

 こう続くと、韓国ってそんなにシリアルキラー量産しているのか、なんておそろしい国、と思ってしまうのですが、これは偶然でしょう。

 それにしても、ナ・ホンジン監督の長編デビュー作「チェイサー」元ネタがマポ区殺人事件と言って20人も殺害された実際の事件がモデルです。

 もう書いてるだけで具合が悪くなっちゃうんですが、この映画もね、本当にびっくりする展開で参りました。

 普通、こうはならんでしょうという展開を地で行きますからね。

 なんか、ハリウッドのハッピーエンドものばかり見てきた自分を反省しました。

 

 なんというかバッドエンドレベルでいうと「セブン」レベルです。

 おいおい、まじか。まじかー、という顔面蒼白でクライマックスを迎えて、いや、うそでしょ、という心理状態をしばらくひきずることになり、スタッフロールが流れる2分前にやっと観念する始末です。

 この激かわゆいヒロイン・ミジンが救出されずに殺人犯の毒牙にかかるというショッキングレベルはFF7の第一ヒロイン・エアリスが中盤でセフィロスに殺害されたシーンと同等のトラウマを視聴者に残すのではないかと思います。

 

まあ、読んでいる方にどれくらい通じるかはわかりませんけど。

 

 とにかくですね、感情移入している被害者がラスト近くになってから一度は殺人犯から逃れたにも関わらず……の展開はかなりきついです。

 と、こういうふうに書くとまるで陰惨でしかない物語かと思うのですが、陰惨であることは真実だとしても、この映画不思議に全編がコミカルに出来上がっています。

 この映画の不思議なところは、元刑事のキム・ユンソク扮するジュンホが一見してデリヘルの元締めをしていて女性に暴力をふるいそうな最低男かと思いきや、韓国の女性には舐められっぱなしな意外さがうけます。

 デリヘル嬢からは冷たい目で見られ「あの女手におえやしない」と情けない愚痴を言ったり、ミジンの携帯には「ゴミ」と登録され、ミジンの娘にも「ゴミ」とつぶやかれ、ほんとうにかわゆいことこの上ない。

 しかも、キム・ユンソクってほんとうにどこにでもいるような顔と言っては失礼なんですが、本当に普通のお顔の俳優さんですが、見ているうちに好きになっていく味わい深い顔をしています。

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(はい、キム・ユンソク 味わい深い顔?

 

 

 韓国の映画を見ていると感じるのですが、冒頭で「別に」と思っていた俳優さんがエンドロールの頃には「すっごい好き」になっていることがよくあります。

 なんでかというと、やっぱり日本人に近い顔立ちだからなんですね。

 あとなんといっても言語が近い。

 言語が近いから、表情筋の動きも似ていて、苦笑いや、チョイ切れ寸前の微妙な表情や、あきれたときの顔、つまり喜怒哀楽の中間に位置するような表情が日本人と限りなく近い。

 だから、「それあるあるだわ」と人物の表情の作り方から状況、心理まで手にとるようにわかる(ような気がする)

 たとえば、冒頭のジュンホのシーン。

 失踪したデリヘル嬢が乗っていた車が路上で枯れ葉にまみれているのを見つけたときのジュンホの表情。

 タバコを吸いながら、ちょっと視線をそらして「あの女、あとで殺してやる」と言ったとき、「まじ、わかる」となりました。

 ぶち切れたいけど、公衆の面前だし、地団駄踏むほど切れるのも癪に障る。

 でもやっぱはらわたは煮えくり返っていて、キレたいけど、キレるの我慢するけど、内心ブチ切れ、というカオスな表情がまさにこれです。

 それからデリヘル嬢が客に呼び出されて、ホテルの一室でシャワーを浴びようとしたら、ドアの陰にカメラをかまえたバスローブ姿の男がおり、それを見て「変態」と言って部屋を飛び出すときの顔。

 まさに変態男を侮蔑した表情、そして「やってらんねえ」という思いがストレートに伝わってきて、「ああ、こういう仕事ってやだよね」と思わずにはいられなくなるほど共感してしまう表情づくり。ていうか、顔芸

 なんというか、人類の表情は世界共通とは言えなんじゃないかと思うくらいの違いがやっぱりあるんじゃないかと思ったり。

 物語は陰鬱だし、バッドエンドではあるのですが、この映画を見てやっぱりよかったな、多くの人に見てもらいたいなというのは、なんだかんだ役者がよかったからです。

 ていうか、顔芸。

 チェイサーという「探す人」というタイトル通り、主人公ジュンホは当初、自分の仕事と金のために失踪したデリヘル嬢を捜索し始めます。

 しかし、デリヘル嬢から「ひどい男」と言われたり、いなくなったミジンに幼い娘がいたり、その娘と行動をすることによって、ミジンを必死で探すようになります。そこにはもう刑事魂とヒューマニズムしか感じられないですし、国家権力である警察が無能すぎる以上、彼がミジンを見つけなければならないという切羽詰まった思いもあります。

 それゆえ、ミジンが助からないと分かったときの、失望がジュンホと重なり、見ている観客はジュンホとおなじ暗澹たるそしてくやしい気持ちでいっぱいになります。

 物語のラストはジュンホが眠っているミジンの娘に寄り添う病院のシーンになりますが、陰惨な物語の最後に唯一の小さな希望が光るような終わり方です。そのラストがあるからこそ、全編のジュンホの東奔西走がフラッシュバックし、いい映画だったとなります。

 

 バッドエンドが悪い映画というわけではないのです。

 希望を描く映画が、よい映画なのです。