7月8日(土)感謝の心、子知らず(おべんとうに入っていた手紙)4/5

承前5/3

 

 Iさんは、ご主人を悲劇的な形で亡くしてしまったが、息子たちが本当にきちんと育って支えてくれたのだと、当時を振り返る。

「おふくろ、親父を責めちゃだめだ。親父はよくやったんだよ」

 そう言って、自分を責めがちだったIさんを励ましてくれたという。

 私はそれを聞いて、胸が熱くなり、仕事をさぼっている最中だというのに、号泣してしまい、Iさんからハンカチまで借りる始末だった。

 何やってるんだという感じだったが、私はIさんの息子さんたちのすばらしさに感動するとともに、Iさんもご主人もこどもをほんとうにすばらしい育てかたをしたのだと思った。

 ご主人はつらい最後を迎えたけれど、まっとうに生きてみたかった、

 それでもだめだった、できなかった、こんなんじゃない、

 自分は出来るはずなのに、という晩年の挫折を受け入れることができず、

 自死を選んでしまった。

 それを責めずに、みんなで支え合って生きていこうとした息子さんたちにご主人の心は受け継がれている。

 これが泣けなくて、いつ泣くんだ。

 と、同時に私は自分の親に対する思いを反省した。

 感謝の心。

 こんな悲劇的な別れ方をしなくても、たぶん、今からでも親を大事にすることはできる。

 それは、ありがとう、ととりあえず口先からでも言ってみることでもいいし、根本的には親を許すことかもしれない、。

 親ではなく、一人の人間として、認めて、許すことは難しいけれど、それを受け入れる。

 それは、親が完璧ではないという諦観の念そのものかもしれないが、いまよりは楽になるような気がした。

 うちの親はIさんのご主人ほど生真面目でもプライドもないけれど、その分甘えん坊で、楽観的で、だからその日と楽しみながら生きて、わがままも言う。

 子供がありがとうを言わないだけで、キレる。

 でもそれは、ある日、現実を受け入れられなくて、自分の心と体を壊すような悲劇を持って家族を傷つけることはせず、日々の小さな紛争(喧嘩)をまき散らすだけで、根本的には幸せであることには違いない。

7月8日(土)感謝の心、子知らず(おべんとうに入っていた手紙)5/5 - 地下階層言語化プロジェクト