7月8日(土)修羅場経験者のやさしさと強さ 1/3(こども時代に出会う大人)

 教育委員会にいると、日々さんざんな情報が入ってくる。

 虐待、育児放棄、傷害、行方不明、自殺。

 そうした児童相談所や警察が介入してくるヘビーな案件は毎日あるわけではない。

 そんな重い案件は個人の気持ちだけではどうにもならず、最終的に制度がフォローするしかない。

 それでも、現場にいると、たった一人の大人が発するたった一言で、子どもを救うこともあるのだと、思わされる。

 

 総じて、修羅場をくぐって大人になった人間は、強い。

 強いと同時に優しい。

 去年、知り合った学校の事務補助のSさんという女性もそうした人間だ。

 彼女は私の10歳上の45歳で、三人の子持ち。

 バスケット業界のたたき上げで、見た目も、豪快。

 しかも合理的で頭がいい。

 彼女の幅広の肉体スペックからは、事務作業なんてとても無理そうだが、なんと学校の伝票整理も丁寧だ。

 休日は終日、子供たちのミニバスの監督やレフェリーも務め、曰くバスケの試合を見に行くと、体育館でひとり叫んでいて、すぐに居場所がわかるという。

 そのSさんと私は相性がいい。

 私が午後の事務作業にだれたときにSさんが来ると、決まって世間話になる。

 それが、気晴らしのひとときとなり、それ以後の仕事がはかどる。

 そんなsさんだったが、私と同じで事務作業が向かないのか、今年から、希望して、小中学校の授業サポート員をすることになった。

 

 この授業サポートは、授業中の教室に入り込み、前をむいていない子供を注意したり、加減乗除の記号のあやふやな子どもに「考えないでもわかるだろう」と言ったり、「先生、こっち来て」と呼びかけるこどもに「こっち来てくださいだろ、リテイク!」と言ったり、児童生徒の授業を受ける環境を整える役割がある。

 ひと昔前の中学生だった私には想像のできないことだが、それほど基本的な授業の受け方ができないこどもが増えているということのほか、

 知識を教えるだけで精一杯の教師がさばききれないこどもたちの様々なニーズに対応した業務ともいえる。

 

 そんなSさんは不思議な人で、外見は完璧な体育会系のノリだが、事務補助時代に、事務長と対立するとしゅん、と音声付でしょげてしまったり、十歳も下の私にそのことで泣きついてきたりして、かなりかわいいところがあった。

 こうしたsさんの強いけれど、強権的で頭が悪い大人に対してはうまく立ち回れない子どものような矛盾したかわいさがあるため、私はこれまでも十歳年上の彼女を全面的にサポートするのが職務の一つだと思ってきた。

 sさんが、事務補助の合間を縫って、Sさんが問題を抱えたこどもたちの保健室サポートを上手にこなしているのも知っていたので、彼女が授業サポートというこどもたちにより多く関われる仕事は天職だと思っていた。

 

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