7月1日(土)通販で節約しているように見えても、やっぱり引き算されているもの3/4

承前2/4

 

 

私は駐車場に向かいながら、脳内でその声に答えました。 

「いや、ハイブランドは高いけど、

 質がいいから時間も労力もショートカットできるんだよ。

 たとえばシャネルのリップは、潤い効果も艶効果もあるから、

 美容リップつけなくても潤うから、一石二鳥だし、

 ランコムの下地だって、機能が高いから時間をかけなくても艶肌になるし、

 ディオールのマニュキュアはしっかりつくから三日ははげないし、

 これが安いマニキュアだと一日ではげるから」

 私は自信満々に答えました。

 すると、脳内のもう一人の私が言いました。

「時は金なりってこと?」

「その通り。高いものは、時間をショートカットできるんです。

 新幹線だってそうでしょ。高いけど、早くて乗り心地がいい」

 

 すると、脳内の私が溜息をつきました。

「あのさ、そんなに時間が大事なの?」

「当たり前じゃん。

 コスメで楽にきれいになれれば、時短できて、

 その分ゆっくり優雅な時間をすごせるもんね」

 脳内のやつが薄笑いをしたのがわかりました。

 

「へえ、それってパラドックスだね。

 時短できる機能性の高いコスメを買う時間を節約して、必死になるみたいな」

 

 なにいってんだ、こいつ。

 と、私は思いました。

 当たり前だろ、早く買って帰りたいんだから。

 

 でも、ですね、そうは思っていても、

 なぜかしっくりこない。

 おかしい、このもやもや感はなんだ。

 私は手の中のショップのバッグをみました。

 

 欲しかったはずのコスメがたっぷり入ったバッグ。

 それらはすべて働く私の生活の時短のために必要なものでした。

 そしてその時短のためのコスメを買う時間も短縮できた今日。

 満足なはずなのに、なんだこの感じ。

 なにか大事なことを見逃しているような。

 

 ハイブランドのショップの間をほとんと競歩に近い早さで駆け抜け、

 美容部員のおもてなしも斬鉄し、買うものだけ買い、

 今、また足早に駐車場に向かっている私。

 

 

 待て、ちょっと、待て。

 

 

「気づいた?」

 脳内の私が抑揚のない声で言いました。

「もしかして、やっちゃった?」

 私は白目になってつぶやきました。

 

「やっちゃたんじゃないの」

 脳内の声にとたんにどっと疲れが押し寄せてきました。

 むなしい気持ち、しっくりこない気持ち。

 私はやっと気がつきました。

 それは、ハイブランドのコスメを買う態度を私が

 自ら捨てていたことからくるものでした。

 

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