4月15日(土)感慨がないことが感慨深い 3/3(映画トレインスポッティングの続編)

hagananae.hatenablog.com

 

「うそ?」

 私は驚いた。

 驚くと同時に怒涛の疑問が押し寄せてきた。

 20年前の映画をどうやって続編を作るのだろう。

 ユアンは40代になっているし、若手の俳優を使って続編を? まさか。

 九十年代の映画をいま、このタイミングで?

 意味あるのか? 等々。

 

 彼はそんな私にはお構いなしに話をつづけた。

「知らなかったんですか? あのときのメンバーで物語の20年後をやるんですよ。うきうきしますよね」

 うきうきするか?

 私は言葉を飲み込んだ。

 私はお兄ちゃんの言ったことが信じられなかった。

 あの時代、中学生の頃、どハマリしたジャンキー映画。

 トレスポ。

 たしか小説もクラスで回し読みした。

 ネオンのオレンジ色にモノクロの人物の映画ジャケ。

 当時で言えば、最高にクールだった、、、かもしれない。

 なつかしい上に、今だったら絶対みない、過ぎ去った青春映画。

f:id:hagananae:20170415212818j:plain

(↑ トレスポ2  らしい)

 

「今更トレスポの続編かあ」

 私のぼやきが聞こえなかったのか、お兄ちゃんは「これもおまけにしますね」と、言ってブルスターをもうひと束花束に入れてくれた。

 私はふいに、また目の前にトレスポに熱狂していたあのころの14歳だった少女の自分が見えたような気がした。

 教室のイスによりかかり、足を机に投げだし、その素行不良の小説を読みまくる行儀の悪い私。

 

 ああ、そうかトレスポが続編を。

 ぜんぜん感慨のない自分に驚いた。

 この20年のうちに、あのトレスポに対する熱狂は氷河期の地球のように冷め、

 もはや続編が出ようが出まいがどうでもよくなっている。

 そのことに驚いた。

 彼は、ブルーを基調にした小さな花束を完成させると、1000円です、と言った。

 私が5000円札を渡すと、おつりがないようで、

「お客さん、すみません。おつりつくってきますんで」

 と、言って、私を残して通りの向こうへ走っていった。

 私は留守番のような形で店に取り残された。

 

 背後で女性ヴォーカルのメランコリックな音楽が流れている。

 春の夜の少し切なくなるような路上で、私は十四歳の自分と一緒にしばらく彼が戻るのを待っていた。

 私の横で、制服姿の生意気な少女は熱心にトレスポのあつっこい小説に熱中し、私はそれを横目で見ながら「もっとましな本を読めよ」と言うのをこらえた。

 すると、少女の私が、無言のまま私をにらんだ。

「じゃあ、なに読めっていうのよ」

 私は黙った。

 まさか、鬼平犯科帳がいい、なんて彼女に言えない。

 私は私自身を見つめながら、溜息をついた。

 二十年の断絶はなかなか埋まらない。

 それは寂しくもあり、歳月の重さでもあり、成長ともいえる気がした。