4月15日(土)感慨がないことが感慨深い 2/3(映画トレインスポッティングの続編)

 承前 1/3

 

 

ブルースターの防衛機能らしいんですが、この液体は花の体液で、損傷受けたところににじみ出て、体液が外に流出するのを防ぐんです。逆にこの液体で傷がふさがってしまうと、そこから水を吸い上げなくなってしまうんです」

 私は、びっくりした。

「それって、常識ですか」

「いや、そうでもないですけど、まあ花もいろいろですから」

 私は花が枯れたのを花のせいにしていたことを反省した。

「植物の体液はいろいろな種類があって、なかにはかぶれるものもあります。このブルースターもなかにはかぶれる人もいるんです」

「ウルシみたいなもんですか」

 お兄ちゃんはうなずいた。

「その通りです。一応切り口を水で軽く流したら、ぬるま湯に入れて白い液体が出なくなるまで洗ってあげてください。そうすれば、ちゃんともちます」

 お兄ちゃんはそういうと、花束にブルースターを添えた。花を見ると、丁寧に余分な花や葉が切り落とされ、美しいバランスになっている。

「かわいい」

 私はうっとりとした。

 やはり猫と花には目がない。

「植物の体液は、人間にもさまざまな作用を及ぼすものがあるんです」

 お兄ちゃんは黙々と作業を進めながら言った。

「たとえば、ちょっとマニアックな話になりますが、オピオイド系化合物と言って、強力な鎮静作用を出す植物もあります。芥子の花ですけど、知ってますか?」

 私はケシと聞いて、ぴんと来た。

 ここのところ、ずっと麻薬戦争の小説を読んでいるのだ。

「阿片、モルヒネですか?」

「それから、ヘロイン」

「なんか、話のテイストが変わってきましたね」

 私が言うと、お兄ちゃんは苦笑した。

「いや、ついはずみです。まあ、モルヒネなんかは、依存性がありますけど、人間にとっては神の恵みみたいなもので、人間は植物の恩恵を受けているわけで、今でも医療機関でも軍隊でも使ってます。もっともヘロインは麻薬の代名詞ですが」

 私は久しぶりに、ヘロインから懐かしい映画を思い出した。

 トレインスポッティング

 94年の映画で、当時私は中学生で、どハマリした。

 なぜハマったかは、あの映画の内容からすると全く思い出せないが、おそらく、主演のユアン・マクレガーに一目惚れしたのだろう。

 たぶん、そうだ。

「トレスポか。また思い出しちゃったよ」

 私は先ほど、パルコで20年前の中学生時代を思い出したばかりだというのに、また14、5歳の思い出に引き戻された。

 私が苦々しい顔をしていると、花束を作り終えたお兄ちゃんが顔をあげた。

「お客さん、トレスポのファンですか?」

 今度は私が顔をあげる番だった。

「かもしれません。映画も原作の小説もしばらくひたってましたね。たしか、14、5歳の頃ですけど」

 

f:id:hagananae:20170415212434j:plain

(↑ 20年前どはまりしたトレインスポッティング 通称トレスポ)

 

 私は、記憶をたぐるように言った。

「まじですか。俺と同じだ!」

 お兄ちゃんは、うれしそうに笑った。

 オタクの少年が笑ったような無邪気な笑顔だった。

「俺と同じ」が、年齢に対して言ってるのか、トレスポファンであることを言っているのか、それとも両方なのか私にはわからなかったが、微妙に掘り下げたたくなかった。

 昔はまっていま、はまってないものを熱く語ることは、まるでセックスの現場を親に見られたような気まずさと恥ずかしさがある。

「じゃあ今度、トレスポ2やるの知ってますか?」

 彼が突然言った。

 

 

hagananae.hatenablog.com