4月15日(土)15歳の自分との邂逅 2/2(宇都宮パルコ20周年の衝撃と35歳の自分)

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 当時、パルコはまるでおとぎの国のようにきらきら輝いていた。

 いや、パルコに神限らず、宇都宮自体、いや、日本全体がまだバブルの残り香に酔っていた時代だった。。

 

 なんてかくとマジでおやじ臭いのだが、本当に15歳当時、私はパルコに行くのが楽しくてしかたがなかった。

 当時は、学校帰りに塾で勉強三昧だった。

 おなかがすくとパルコの地下のお弁当やさんに三食そぼろ弁当買いに行ったものだ。

 地下にはマリオンクレープやアクセサリー屋がひしめいてて、ほしいものばかりだった。

 

 ふいに、20年前のパルコが脳裏を走馬燈のように駆けめぐって、我を忘れた。

 現実に引き戻されたのは、手に持っていた読みかけの密教の本が足下に落ちたからだった。

 はっと我に返り、私は落ちた本に手をのばした。

 しかし、延ばしかけた手が止まった。

 

 密教

 いったい、あれから20年。

 なんで私は35歳になるこの年に密教などしんき臭い本を読んでいるのだ?

 坊さんになるわけでもあるまいし。

 よりによって、密教

 ばかじゃねえの?

 

 もう一度、ガラスの向こうに目を向けた。

 ポスターの中で「祝 宇都宮パルコ20周年」の文字が不動のインパクトを誇っている。

 それぞれ、ジャズバー、カクテルバー、餃子屋ののれん前、焼きそば屋のおばちゃんとおいちゃんが背景だ。ぱっとみただけで、パルコと宇都宮市のコラボ作品だとわかる。

 

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 あの、パルコが。 

 そう、あのミーハーできらきらしたパルコが行政と。

 私の頭の中は再びカオスになった。

 それで、私は密教を?

 密教って、私の人生に意味ある?

 

 私は本を取り上げ、目を閉じた。

 20年は確実に経過していた。

 していたのだが、いったい私はその間なにを成し遂げただろう。

 高校受験をして、

 大学受験をして、

 遊んで、旅をして、本を読んで、

 行政マンになって、

 税務とか道路とか公園とか、

 景観とか街づくりとか、

 秘書とか、教育とか。

 

 ああ。

 

 目をあけると、ガラスの向こう側に中学の制服を来た生意気そうな少女が立っていた。

 紺のブレザーにグレーのプリーツミニ。

 白いハイソックス。

 怖いもの知らずの、世界は無限だと思っており、自分は何者にでもなれると思っている小生意気で情熱的な15歳の自分。

 

 私は彼女に、今の現状を説得できるだけの気力があるだろうか。

 私は目を閉じて、深呼吸をした。

 説得する気力はある。

 あるけれど、彼女は絶対に納得しないだろう。

 きっと大喧嘩になるだろう。

 

 あんた、なんで役人なんかやってんの? と、彼女は言うだろう。

 いや、これには大人の事情が、、と私はとりあえず言う。

 

 その先は、きっと長い会話になるだろう。いや、殴りありになるだろう。

 私は15歳の自分との会話のシュミレートをそうそうに切り上げると、

 そそくさとスタバを出た。

 

 父との待ち合わせにはあと1時間はある。

 花束でも買って帰ろうと思った。

 20年前の自分との邂逅の記念に。

 4月の夜はまだ肌寒くて、私は暗いシャッター通りをとぼとぼと歩きだした。