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4月1日(土)年をとる人間、とらないヒーロー:必殺仕置人(76)沖雅也

 

 

 めったに映画にもドラマにもはまらない私が、ここのところ熱に浮かされたようにドラマを見ている。

 しかも古い。

必殺仕置人」(76)。

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時代劇の中でもシリーズ化されたヒット作品で、恨みをもつ人々の仇討ちを「仕置き」として金で請け負う暗殺者が主人公。

 毎回、お上に隠れてこっそりと仕置きをするというストーリーだ。

 これがもう、今日あるような時代劇とは違って、ストーリーが適度に複雑で見応えがある。

 そしてなにより、俳優がすっごい。

 

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(仕置人たち 左から念仏の鉄:山崎務 棺桶の錠:沖雅也 同心・中村主水藤田まこと )

 

 昔の俳優ってほんとすごい。

 すごみがあるというか、演技がみんなうまくて引き込まれる。

 必殺仕置人では、主演は山崎努演じる、「念仏の鉄」なのだが、やばい!としか言いようのない色気を放っており、あまりのかっこよさに一瞬誰だかわからなかった。

 人間年をとると当然のことだが、恐ろしくもある。

 山崎勉は、私がリアルタイムでみたときは、すでに「おじいさん俳優」だった。

 しかし、今作では、山崎努は油の乗り切った超絶色気のある「悪人」坊主を演じており、まじで「抱かれたい」と思わせる主人公が絶品だ。

 

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(↑ 若すぎるアクに強い山崎努 かっこええ)

 比較して、藤田まことの演じる奉行所の同心中村主水は、若いときから老けてみえるために、このドラマでもさほど変化がなかった。

 それでも若いので、私が小学生の頃見ていた「はぐれ刑事」の穏やかでひょうひょうとした雰囲気よりも、いくらか山っ気のある若々しい荒々しさがあり、新鮮だ。

 加えて、毎回悪人のゲストが出てくるのだが、ときおりあまりのイケメンの登場に、誰かと思えば中尾彬だったり、前田吟はそのままだったりと、ほっとするなんてこともある。

 

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(↑ いい写真。左:藤田まことの角が取れる前。十分かっこいい。

 右:山崎努、その100倍かっこいい)

 そういうわけで、つい好きになった俳優を画像検索してここのところ、楽しかった。 同じ仕掛人のグループの、紅一点野川由美子は、若い頃は本当に美人でふるいつきたくなるほどキュートであるし、三名目のお披露目の半次役、津坂国章は、若い頃は茶目っ気があるが、おじいさんになってからは、まさに別人であるし、藤田まことにいたっては、ずいぶん前に亡くなっているし、それぞれに年を重ねて、歳月というのは残酷というか、などと思い、自分も確実に年をとっていくのだとしみじみしたり。

 しかし、そんなときたったひとり、山崎努と同じように殺しの主演をはる棺桶の錠役の沖雅也だけ、画像検索しても若いときのみずみずしいきりっとした写真しか出てこなかったのだ。

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(↑ お披露目の半次役:津川国章 おきん役:野川由美子

 この二人は情報収集と陽動を担当し、さらにドラマ中でも、ムードーメーカーで暗い暗殺業に彩りと笑いを添える重要なポジション)

 

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(↑ 棺桶の錠役:沖雅也

 

 その鮮やかな写真の数々にああ、やっぱりかっこええ!と思うと同時に、イヤな予感がした。

 若い頃の写真しかないということは、つまりそういうことだ。 

 調べると、やはり若い時に亡くなっていた。

 それも31歳だった。

 死因は自殺。高層ビルから飛び降りたのだという。

 ああ、切ないと思うと同時に心が痛んだ。

 彼が亡くなったのは、遙か昔のことだが、長生きして、老いさらばえてほしかったと思った。

 沖雅也の演じる映像の中の錠はいつでも正義感に満ちて、悲しみを抱えつつ、悪を許さない血気盛んな若者だった。

 でもそれがいつか年をとり、角が否応なくとれてしまい、おっさんになり、おじいさんになり、それが寂しくもあり、そうあってほしかった。

 しかし、31歳で命を絶った沖雅也はヒーローのまま、二度と年はとらず、フィルムの中に収まったままだ。

 それが、悲しくもあり、切なくもあり、人間を途中で放棄した熱血感でありながら、寂しげな配役の錠にも重なるのだった。

 切なすぎる。

 ヒーローの、冥福を祈るばかりだ。