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3月11日(土)恋にだとりつきたくて:恋の罪(映画)

恋愛コラム:恋はよいもの、はかないもの

 

第2回:恋にだとりつきたくて

   恋の罪(映画)

 

 急に思い立って園子温監督の「恋の罪」を観る。

 でも、この映画に恋っぽい内容は出てこない。

 父に近親相姦的な思いを抱きつつ、それがかなえられないために売春を繰り返す大学助教授の美津子。

 セックスレスな夫婦生活に我慢のならないいずみ。

 夫婦円満でありながら、不倫を続ける和子。

 彼女たちは恋にたどりつきたくて、恋の周辺をぐるぐる回っているだけで、恋にたどりつかない。

 

舞台は渋谷丸山町。

 

 渋谷は不思議な町で、どの町も駅から離れるほど喧噪が穏やかになっていくものだが、渋谷の場合はそれが極端すぎる。

 スクランブル交差点には音と映像が幾重にもレイヤーを重なり、発狂しそうなほどだが、道玄坂の途中から人も減り始め、突如としてかなり静かな一帯になる。

 

 そこが丸山町だ。

 

 この物語の美津子といずみは恋を求めて、立ちんぼと呼ばれる、売春でも後ろ盾のない底辺の娼婦をすることになる。

 しかし、当然売春は売春にしかならない。

 売春は愛ではなく金銭と体をトレードしているからだ。

 恋はSEXを誘発するけれど、SEXは恋を誘発しない、と思う。

 それでも、人間に肉体がある以上、体のつながりが恋という感情を誘発しないともかぎらない。

 

 一度だけ、丸山町のラブホに泊まったことがある。

 ラブホのスイートを貸し切って、パーティーをするというバカな企画があった。

 そのときその夜初めて会った年下の男の子と意気投合した。

 3時間もお酒を飲んで、王様ゲームやコスプレの罰ゲームをしていると、複数いる異性からなんとなくお気に入りができる。

 それが彼だった。

 お酒も回って全裸でジャグジーに入ったり、下着で抱き合ったり、とことんバカみたいなことをしたが、それでもほかにも男女がいる部屋でまさかSEXなんてできない。

 けれど、よくよく考えればそれが目的であったのだ。

 そのとき、ベッドに横たわる彼がぼやくように「こんな出会いをしなければ」と言ったのが、妙に心に残っている。

 たしかに私も彼のことがほんの少しお気に入りになっていた。

 いたけれど、ラブホで出会い、ディープキスまでしたからと言って、その先を思い描くことはできなかった。

 こんな出会いかたをしなければ、彼と私は出会うことさえなかったのだ。

 しかし、しぶりにしぶったディープキスで、彼が妙に喜んでいたので、

私も少し嬉しくなった。

 けれど、会ったよの日の夜にした彼とのキスは本当に好きになった人とするキスとはまったく違う次元のものだった。

 

 キスは積み上げた切なさがなければ全然おいしくない。

 でも、だからこそ、彼の言葉が耳に残る。

 こんな出会い方をしなければ。

 しなければ、私たちは出会わなかったよ。

 口に出したら、みじめさに拍車がかかるような気がして私は彼の胸に顔を埋めることしかできなかった。

 私はラブホで遊ぶような女じゃないんだよ。

 言ってみたところで、無駄だ。だから、そのセリフを飲み込んだ。

 

 丸山町のラブホにはそんなダサい思い出がある。