10月20日(木)婚活失敗者のうめき

 

 34歳と半年を向かえ、ときどき人生の先が見えたかなという現実にとらわれることもある一方、まだまだこれからという気持ちもある。


 結婚をする予定も恋愛をする予定もなく、そのこと自体にあせりもなくなっているのが今だ。


 職場の窓口はまさに子育て世代が毎日押し寄せ、現場に行けば小学校や中学校に入ることもあり、自分の年で中学生の子供がいるお母さんに会うこともある。
 周囲の友人はほぼ残らず結婚をし、出産、子育てをするなかで、

「あせり」がないかというとそれは、ずいぶん前にあったような気がするというあわい感情でしかない。


 あまりのマッチング精度の低さに半年で結婚相談所を退会して二ヶ月、

「もう結婚はいいかな」という境地に至っている。
 世間の女性の婚活の動機はそれぞれだが、

なかでも「子供がほしい」というのが切実なものらしく、

とにかくそれを重視して「結婚」にこだわる人もいる。


 私の場合は、私にとってのパートナーが重要なのであって、

子供がほしいというわけではなかった。
 子供がほしくないわけではないが、圧倒的に「子供がほしい」という時代はすぎて、今は結婚というパートナーを得ること自体、「来世でいいかな」と完全にあきらめモードだ。


 ほんとうに、私にとってそれくらい「結婚」も「パートナー」もほど遠いものになった。


 そのこと自体に、落ち込む日々はしばらく来ないだろう。
 それぐらい、婚活にこりごり、嫌気がさしたのだ。

 

 だいたい婚期というものは本当に存在し、とにかく「意志」で相手を見つけよう、という時に「見つけられない」と、私のように「時間と労力の無駄」、とあきらめるようになってしまう。
 私の場合は「作家になって、好きな仕事と結婚する野望」があったので、婚活から浅い傷で脱退してしまい、事実それでいいやと思ってしまった。
 と、同時に私の中で荒れ狂う自己否定に対処するためには、自分に対する徹底的なあきらめが生まれた。
 それは、「もともと私は結婚に向いてない人間なんだ。

結婚はできる人がして、子供は作れる人たちがつくり、私の役目は仕事をとおして社会に貢献することだ。

だから、もう私が結婚しなくてもいい。

っていうか、できなかったんだから、しかたないじゃん」といういいわけもセットになったものだ。
 いくらか卑屈になっているものの、「私には仕事しかない」という自負も入った、なんというか血みどろで同時にさっぱりした感情が今心に居座っている。
 もはや他人の子供を見ても、うらやましいとは思わず、風景にすぎず、時々自分が子供を抱っこをしている姿を想像することはあっても、きっと仕事のほうを重視して、子育てを周囲に委託する割合が多い、そんな母親だろうな、と想像が生まれる。


 二十代のころはそうではなかった。
 たまたま頼まれて始めた塾の講師や保育園のバイトで5歳児から高校生までの教育に携わり、子供に教えることの楽しさ、子供と自分が波長があうことがわかった。
 ずっと子供に対して興味がないと思っていたが、私は十分子供たちが大好きで、もし作家になりたいという野望さえなければ、教育者が自分の転職だと思ったぐらいだ。
 子供は3人までなら大事に丁寧に育てられると思ったのも26歳ぐらいの時で、このときにそのまま世間を知らずに結婚をしていたら、そういう機会が恐ろしいことにあったら、今の私はいなかっただろうと思う。
 それとも、お母さんになった上で、書くことに回帰して家族をおろそかにしていただろうか。


 30歳のときに恋愛相手がいたが、出会いから半年で相手に生活力がない上に、離婚した子供二人の養育費がかかることから、結婚は無理だとあきらめた。
 今思えば、30歳でする恋愛ではなかったが、ほんとうの恋愛というのは本当に落ちるものだから仕方がない。
 相思相愛の恋愛がこの世に存在すると知ったのもこの経験が大きく、映画やドラマのような一日で恋に落ちて、数日で運命が二人を切り離すということがあるのだと知ったのもこのときだ。
 はっきり言って、この経験はものすごく痛かったがないよりましな経験だったと言える。
 それから地味に婚活をしたが、そもそも婚活相手は恋愛相手にならなかった。
 あまり数えたくもないが、たぶん200人ぐらいとはお見合いをしたんじゃないかと思う。


 いま思えば自分の思う相手とまったく巡りあえなかったのは、いまの婚活のマッチング制度の精度が文字通り徹底的に低いからだ。

 仕事に野望を持つ私でさえ、今でもいい人がいれば、と思わない日はないし、たいていの人間はパートナーをほしいと思っている。
 それなのに、婚活において出会えないのは、出会うためのシステムがないからだ、というのが私の婚活を通して感じた提言だ。
 要するに、相当な費用を出すのだから、せめて会った瞬間に「ないな」という異性をよこしてくるのをやめろ、ということだ。
 そもそもなぜこうしたことが起こるのかというと、マッチングサイトにおいてこちらが要求する相手と、AIなり、相談員が推してくる相手の間にミスマッチが生じているからだ。
 ここのところが、まじでグランドキャニオンのすさまじい溝だ。

 あなたの要求する男なんて、この世にいませんから、とはっきり言われたほうがまだましなくらい、こちらの要求にそってない異性を推してくる。


 いや、無言のうちにそう言われているのかもしれないが、私の場合、その無言のアクションに我慢していられるのが五ヶ月だっただけだ。
 五ヶ月も自分からしたら、飲みの席で友達にもなれない異性を紹介してくる相談所に対してなにも言えなかったのは、自分がクレームを言うことで惨めになるか、同時に自分を見てもの言えよ、と言われるのがいやだったからかもしれない。
 しかし、本音の部分では婚活サイトにあつまる連中はくずばっかだな、という結論にならざるをえない。
 そして、その評価は自分にもフィードバックされる、まさに自己嫌悪のループにからめとられたようになる。

 婚活にしても就活にしても、はたまた旅のホテル選びひとつとっても、この手の不快かつ精神的にぐっとくる状況は、マッチングの精度が低すぎるからだ。
 あと根本的に自分がどういう幸せを求めているかのビジョンもわかってない場合がある。これも、AIである程度解決できるというのが今回の持論だ。

 話は少し横にそれるが、今日、AIについての産学連携推進機構からセミナーに関するメールが来て、あること思い出した。
 去年の今頃AIに関するセミナーがあり、そこで東大準教授の、松尾豊氏がある発言をした。
 それは「AIで結婚相手を選べたほうがいいよね。だって自分で選ぶより精度が高いんだもん」
 というものだ。
 私自身はそのとき「冗談じゃない、AI論者はそこまでまかせちゃうの? 人間の意志決定を捨ててるでしょ、松尾さん」
 と内心その壇上にむかって、言いたかったのだが、今思えば180度転換して、ですよね!といいたい気分だ。
 実は最近読んだ先進技術の文献のなかで、婚活のマッチングサイトの記事が載っていた。
 それによると、婚活をしていても自分のプロフの閲覧数があまりに少ないことを憂えたある男性が、自分の会いたい女性に自分の情報が晒されていないことに気づき、(つまり需要と供給のミスマッチ起きていることに気がつき)行動を起こした。
 ミスマッチの原因はマッチング目的とした質問事項が要求する人物像をはじきだしていないことだった。
 そこで男性は25歳から42歳までの女性のデータをそのサイトから2万人分、手当たり次第にかき集めた。
 質問回答数600万をAIに振り分け、7つの女性群に振り分けた。
 さらに一つのクラスターを二つにわけ、地域の選別をする。
 すると近場に住む女性だけでAIがはじきだす自分と「あう女性」が一万人おり、その一万人目でもマッチング率は9割以上だったということだ。
 これがスタートライン。
 ここから彼はAIの予測機能にバックアップされて女性からされる質問事項にたいする回答案もつくった。
 あとは現場を踏むだけだ。

 現場を踏むうちに、彼は会う女性がみな、同じ傾向があることを知った。
 同じ話題、同じ興味関心、同じファッション、同じ靴、同じスマホのカバーなどなど。
 そんなデジャブ感が続いてついに88人目にデジャブ感の全くない女性と出会い、彼女と結婚をする。

 と、まあ映画化するにはあまりにAIの予測精度に偏りすぎたハッカーのキショイ話になるのだが、これは実話だ。

 私がこの話を知って、これができればな、と思った。
 実際、このミスマッチは「あるある」なのだ。
 この話では自分が求める相手を精査するための質問事項がまったく求めに応じていないという事実が浮き彫りにされており、これが真実だということは婚活をしている上で誰もが肌実感していることだと思う。 
 さらに、私も感じたことだが、多くの人と会い続けると、似た人物群が自然にできあがる。
 これが本当に似たタイプがいて兄弟か何かかと思うぐらい価値観が似ているので、心底気持ち悪いのだ。
 だとすれば、人間はやはりクラスターにわけることができるのだ。
 だったら情報処理に長けたAIに適切な質問とマッチングの度合いと精査させ、よい質問シートを婚活会員全員にぶつけたあと、ジャンル別のクラスター群にわければ、婚活者にそれだけで門戸が解放される。

 とまあ、思うのだが。

 このシステムの開発はもしかすると、とっくに可能であり、これをしたらすぐにマッチングして相談所は儲けが少ないからわざとやっていないということもある、かもしれない。
 しかし、私のいたところで婚活成功者が2割以下というのは、満足度が2割以下ということであり、普通の商売なら成立しえず早晩破綻するのがセオリーではないだろうか。 

 まあ、そういうわけで今まさに松尾さんが言ったようなAIマッチングで、お金もエネルギーも無駄にならず、がんばるところに力を注げるようなAIの活用を待ち望む者の遠吠えだ。
 っていうか、ぜったいこれすぐにできると思うんだけどね。。

 結婚したい人はいっぱいいて、でも出会うチャンスがないのはやっぱり事実で、そういうときやる気のある人のやる気を空回りさせないでほしいんだよね。
 とくにお金を出している人たちは本気だから。
 国も本気で少子化対策とか言ってるなら、ここらから手をつけていいんじゃない。せっかく、ビッグデータも持ってるんだし。
 といわけで、今回は終わり。
 あー、この精度の高いマッチングAIほしいなあ。