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12月24日(日)映画レビュー チャイルド44

 

 率直な感想は大好きな俳優さんがそれとわからないほどに年をとっていて、戸惑う!(笑)です。
 好きな俳優というのは、主人公の左遷先の上司ネステロフ将軍のゲイリー・オールドマン

 見た目はまんま、「レオン」の頃の完璧に若い頃の面影を残しつつ保守的で頑固三割増しの有能な人物となっております。
ゲイリーはもう、中学生の頃から彼が大好きで、年とってからのいぶし銀もエレガントさいっぱいで最高でした。


 そして、もう一人といえば、ヴァンサン・カッセル
 はじめ本気で彼が演じている主人公の上司クズミン少佐がカッセルだとわかりませんでした。
 よくみると面影まんまなんですが、私の中ではずっと「クリムゾン・リバー」の頃のバイオレンス刑事のままんなですよね。
 すみません、古いところで。
 でも好きな顔立ちというのは深層心理にあるもので、あとでクズミン少佐のキャストを確認したら彼でした。
 なんというか、時の流れと自分のぼけを感じました。
 
 ★ストーリー
 主人公レオ・デミドフはソビエト国家保安省(MGB)の捜査官。
 1933年のホロドモール大飢饉で大量の孤児が発生したが、レオは孤児院からが脱走し、MGBに入省することができた。
 今は将来を嘱望され、美人で従順な妻ライサとともにモスクワの瀟洒なアパートに住んでいる。


 しかし、獣医ブロツキーをスパイ容疑で逮捕する際に部下ワシーリーを殴りつけたことから彼のキャリアに影が差しはじめる。
 レオが彼に手をあげたのは、冷酷で俗物の部下ワシーリーがブロツキーをかくまった農民夫婦を子供の目の前で虐殺したからであった。
 そんな中、レオの同僚のアンドレエフの息子が線路沿いで死体で発見されるという事件が起きる。
 アンドレエフの遺族たちは息子が事故死ではなく他殺だと言い張るが、共産主義圏であるソビエトにとって殺人は国家にたいする反逆であり、「ありえない」ことであった。
 レオはクズミン少佐に命じられ、「事故死」として遺族の説得をするが、子供が裸で裂傷を負っていたなどの状況を遺族から聞いて、列車事故とするには疑問に思う。
 しかし、先に逮捕したブロツキーからレオの妻ライサがスパイであるという密告があり、それどころではなくなる。
 レオは妻をかばい、銃殺を免れるもののMGBの捜査官をはずされ、山奥の町へ左遷される。


 左遷先はウラル山脈の東側になるヴォルスク。
 油と据えた臭いのする料理屋の二階に部屋をあてがわれ、教師だったライサも学校の掃除婦としてのみじめな生活がはじまった。
 レオは民警として左遷されたが、ヴォルスクの民警をたばねるネステロフ将軍からすれば、元MGBがこんな田舎町に民警としてくるはずがない。スパイに違いないと思いこむ。
 レオは説明してもしなくてもよけい怪しまれると思い、粛々と任務をこなすことにする。
 一方で妻のライサとけんかになり、かつてついた嘘を告白される。
 結婚しようとしたのも、レオがMGBで逆らえば命がないと思ったからでり、結婚に愛がなかったと言われる。
 レオははじめて妻の本音を知り、自分がライサを仕事のキャリアや瀟洒なアパート同様、自分の生活を彩るもののように扱っていたことに気がつく。
 しかし、キャリアも家もなくしたレオにとってはもう妻しか残っていないのだった。
 「これからは対等よ」
 それは妻からはじめて聞く人権宣言だった。
 そしてもう一つ、過去の負債がまた一つレオの前に差し出される。
 田舎町のヴォルスクでまたしても子供の他殺体が見つかったのだ。
 かつてモスクワでみたアンドレエフの息子の遺体と同じ特徴を持つことから、レオはネステロフ将軍にモスクワに行かせてくれるように頼む。
 モスクワではアンドレエフと再会するが、有力な手がかりがないままヴォルスクに帰還するが、ネステロフ将軍は線路沿いで子供が44人同じ手口で殺され、それぞれ犯人があげられていることを調べ上げていた。
 線路沿いを移動し、殺人が頻繁に起きている場所にはトラック工場があった。
 犯人はこの工場につとめている可能性がある。
 ロストフ。
 レオが向かった場所にはまさしく犯人となる男がいた。

 

 ★レビュー
 共産主義社会って本当に無理があって恐怖すぎる。
 時間的には1950年代とのことですが、はっきり言ってディストピア小説のような舞台でした。
 小説は上巻までしか読んでいないのですが、密告と政治的なからみで昇進したり銃殺されたりする世界で、正当ないいわけというのが通用しないのですね。
 そんな中で、恐怖政治の手先として猟犬役の主人公レオ・デミドフは妻にさえ恐怖を与える男として君臨します。
 そんな彼にも人の心はあり、妻がスパイ容疑を欠けられたときも妻を守りきることに終始して命以外の全てを失います。
 そもそも妻をスパイしていたこともある彼には妻が裏切りものであるはずがなく、むしろ彼ら夫婦をねたむ人間の密告でしかないことはわかりきっていました。
 しかし、妻を密告しなければ、自分たちの両親と自分もまた犠牲になるのです。
 彼の父親は彼に3人と1人の命だ。
 わかりきっていると、冷酷な「正義」を下します。
 それをドアの外で聞いていた妻のライサはとっさに自分は妊娠していると嘘をつきます。
 レオが妊娠をきっかけに妻を保護することを決めたのかは定かではありませんが、とにかく妻を守ることで左遷されます。
 そして、左遷先で事件を目の当たりにして、はじめて本当の真実をさぐろうと決心します。
 ここからがおもしろくなるところなんですが、なんていうか、ラストというか犯人は実は体制側の陰謀とかではないんですね。
 というのは、イメージしていたストーリーはこう、ソビエトのあちこちを移動してスパイ小説的な動きをするわけです。
 もちろん、レオも元部下のワシーリーを筆頭とするMGBから命をねらわれます。
 さらに子供達の遺体にはかなり正確な外科的処置により、胃が切除されたりと、想像するにMGBの人体実験なり、なんなりなのではないかと期待がいや増すわけですが、犯人は意外すぎる人でした。
 よい意味ではなく、悪い意味でです。
 物語としては、こうした事件解決を通して夫婦が夫婦になっていく人間ドラマであり、共産主義という今となっては異世界を扱うSF的なところもあり、国中を飛び回るスパイ感もあり、充実ではあるのですが、うまく物語に犯人像がマッチしていないような感じだったんですよね。
 みなさんはどう思われたのでしょうか。
 この映画を勧めるとき、ミステリーではなく私だったら、夫婦の仲直りの物語だよ、とレコメンドするしかないのかな、と。
 あと、ゲイリー・オールドマンいぶし銀ですか。