12月30日(水)映画レビュー:バック・イン・クライム

 

 ミステリーというものが広範な枠組みをもっているように、タイムスリップものというジャンルも密林のように分け入ると迷子になる。
 というか、タイムスリップはもはやジャンルではなく、小道具と化している。

「バック・イン・クライム」はいわゆるタイムスリップものだ。
 だが、タイムスリップする理由も説明されなければ、戻る理由もない。
 ただ、設定、事件として主人公は20年前に唐突にタイムスリップし、そして唐突に過去で再会した恋人に主人公の座を譲り渡すと、潔く次元の狭間に消えてしまい、20年後にその恋人と「再会」する主人公はもはや、タイムスリップした主人公とは別の時間軸の自分である。

 タイムスリップものを考えると、よくよく練り込み(巧妙なごまかし)を施さないと、物語が不安定なゆがみを持つ。
 この物語は、その意味でつっこみどころ満載なのだが、結局おまえの感想はどうなのか?と聞かれると、満面の笑みでこう答える。  

 

いい! すごくいい! フランス映画万歳!

なんだよ、早くそれを言えよ。


一行目で言えよ。
である。すみません。

 

 要するにですね、この物語はタイムスリップにかこつけたラブストーリーです。


 ただ、表向き、宣伝としては、SF,ミステリのタグ付けが固定しており、結果としてラブなわけであって、はじめからラブのタグでカテゴライズするのはやはり、あれなわけです。

なので、私のような「ラブはすかんけん。ラブは自分でするもんやけん」とかのたまう輩には不意打ちで、いいのです。
というか、私、ラブ好きなのかな。笑

 

 

以下ストーリー

 朝、まだほの暗い街の中をフードを目深にかぶった一人のランナーが走っている。
 大きな橋の下には豊かな水流をたたえた河が流れている。
 ふと、ランナーが足橋の中央で足を止めた。
 そのまま怪訝そうに欄干から川面に目をこらす。
 視界の先、離れた川岸に無惨に打ち上げられたマネキンがあったからだ。
 マネキン。
 なぜ、こんなところに。
 衣服は乱れ、顔はうつ伏せで見えない。
 手足が青白く水を吸ってむくんでいる。
 そこでやっと気がつく。
 違う。
 あれは、遺体だ。
 本物の死体だ。
 打ち上げられた死体。
 フードをとり、彼女はもう一度目をこらした。
 水辺にあげられた命なき肉体。
 彼女の脳裏に封印したはずの過去が蘇った。

 刑事ケンプはその死体を見て20年前の忌まわしい事件を思い出した。
 耳を切り取られた無惨な死体。
 20年前、同僚が犯人に殺され、犯人は逃げた。
 忘れたい過去。
 それが、いままた始まった。

 死体の第一発見者はエレーヌ。
 地元で精神科医を営む女性だ。
 離婚をして息子がひとりいる。
 ケンプは彼女の息子が警察に呼び出された件をきっかけに、急速に接近する。
 お礼をしたいという彼女の言葉に二人はレストランで楽しい夜を過ごす。ひさしぶりの気分のいい夜だった。
 その帰り道、ケンプは例の死体があがった橋の上を車で走っていると、白いワゴン車が止まっているのを見つけた。
 ドアが空き、人気のない車にケンプが近づく。裏に回るが人はいない。おかしい。
 まさか河に落ちたのか。
 欄干から河に目をこらしたそのとき、後頭部に激しい衝撃が走った。
 ケンプは衝撃とともに河に真っ逆様に落下した。
 水に落ちる。
 必死にもがく。川面から顔をやっとだす。
 びしょぬれで橋に戻るが、なぜかそこに自分の車がない。
 おかしい。
 仕方なく彼は徒歩でマンションに戻る。
 だが、マンションは入室許可のための認証がない。
 家をでる今朝まであったのに、いつのまに取り払われたのだ。
 怪訝に思いつつもエレベーターに入るが、そこでも違和感を感じる。
 なんだ、このレトロなつくりは。
 おかしい。
 自分の部屋に鍵を差し込もうとしたとき、部屋の中から人の気配がする。
 ケンプはあわててドアからとびのき、壁に身を隠す。
 自分の部屋から一人の男が出てきた。
 男はエレベーターに乗り込み、ボタンを押した。
 ケンプはそっと顔をだして、男を確認した。
 男はこちらに向き直り、ゆっくりと顔をあげた。
 男の顔は自分だった。

 

 

レビュー
 物語は20年前にタイムスリップした刑事のケンプが若い自分に犯人と誤解されながらもエレーヌのサポートを受けて犯人を捕まえるというものです。
 20年前になぜタイムスリップしたのかは説明されないまま、物語は進行し、結局最後までわからないのですが、事件を解決したところで、ケンプはまた河に落ちてそのままその時代からは消えてしまいます。
 そうなる前に20年前のエレーヌと出会い、彼女が20年後の自分に話をしたトラウマを指摘することで、彼が未来から来たことを納得させます。 
 犯人を捕まえたら君の前から姿を消す。
 そう言った彼に少しずつ心を引かれる彼女。
 彼女には婚約者がいますが、彼に会いたい一心で、約束も交わさないままマンションを飛び出します。
 彼がいるはずのあの河に向かって。

 犯人はお約束通り捕まるのですが、こっちの事件はですね、すごくシンプルに解決します。
 犯人のサイコさん具合が説明されるわけでもありません。
 ケンプは犯人を捕まえたところで、例によって消えてしまう(おそらく未来、元の時間軸にもどった?)のですが、残されたエレーヌは彼を思ったまま20年を過ごします。
 そして彼女はその事件をきっかけに犯罪心理学の道に進みます。
 20年後、ケンプが解決した事件を彼女がある講演会で使用します。
 そして、そこでエレーヌとケンプ(20年前に彼女が好きだったケンプを追いかけた刑事)は再会します。
 エレーヌはケンプを知っているような口振りですが、彼には初対面にしか思えない。
 と、ふいに彼は20年前に自分の部屋でみつけたメモ帳を思い出します。 これは事件当時なぜか自分の部屋で見つけたもので、そこには橋と彼女の似顔絵がかかれていました。
 ケンプにはそれがなぜ自分の部屋にあったのか、持ち主は誰なのかわからないままタンスの奥にしまっていたのですが、彼女を見て手帳を思い出しました。
手帳にかかれた橋になにげなく向かうと、そこには彼女が待っていました。
 エレーヌの前に現れたのは20年前に彼女が愛したケンプその人でした。

 

 

 ラブです。


 ハッピーなラストです。


 とはいえ、彼女の前に現れたのは20年前の彼ではないんですけどね。
 なので、事件を解決できないトラウマ抱えつつも事件を解決しようとしていた当初の彼とは違う時間軸で20年間を過ごしたはずなのです。
 だからね、「別人」だと思うんですが、そんなやぼなこと言うなよとばかりのラブぶりです。
 うん、まあいいんじゃないですかね。
 としか言いようがないのですが、たぶんもっとうまくやれるはずです。
 ただ、私はこの時間軸を越えたラブストーリーって意外に好きだなと思いました。というかそのことに気がつきました。
 作るのは大変ですよね。
 いろいろ年表作ったり。シュレディンガーの猫を納得させたりと、まあ。
 でも、やりたいです!笑
 結局それか。
 ラブですからいいんですけど、イーガンがこの映画を見たら、当初の自分とラブになった彼女は20年前の彼女とは別人だし、過去でも恋愛がうまくいくとは思えないとか、彼女が愛した20年前の人物は20年後には別人になっているはずだとか、まあそんなことを言ってまったく別の話になると思います。
 というか、自分同士が主権を争って戦うんじゃないかと踏んでるんですが。
 タイムスリップバトル。
 これを地で行っているのが「プリデスティネーション」です。

 最後に、映画のヒロインエレーヌを好演しているのがフランス女優メラニー・ティエリー。
 超絶かわゆい。
 私の1つ上の超絶キュートな美人さんです。
 私のツボでした。
 目が離れていてくちびるぽってりの少女のような面影のちょっとまちがうと美人からはずれそうな、絶妙なバランスの美人さん。
 テリー・ギリアム監督の「ゼロの未来」でもヒロインです。
 さて、次回はゼロの未来でお会いしましょう。
 では。