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12月25日(金)レビュー ★タクシードライバー(76)

 

 今週のラインナップは20年感覚で40年前の名作から3本みました。


「タクシードライバー(76)」、「アンダーグラウンド(95)」、「マッド・ガンズ(14)」ほぼ20年間隔ですが、選んだわけではなくて、たまたまです。


 以下、感想。

 

 タクシードライバー(76)


 主演、若き、若すぎるロバート・デニーロ
 今の私より若いんじゃなかろうか。

 私が物心ついたときにはすでにおじさんだったデニーロが、もうほんとうに若い。
 で、若い瞬間を初めてみたもんですから、その驚きでストーリーが飛ぶというのは冗談です。


 
 ★ストーリー


 ベトナム戦争海兵隊所属だった26歳のトラビスは、ニューヨークに帰還したが、なんの保障もなくタクシードライバーになるしかなかった。

 週6日で夕方6時から朝の6時までの12時間勤務。

 友人も家族もおらず、不眠症の続く彼はタクシードライバーとして夜のネオン街を客を求めて流す。
 夜の街には娼婦や麻薬の売人、ポン引きなどがあふれていた。

 徹夜あけでも眠くならないトラビスはポルノ映画を見て時間をつぶす。
 自分の人生に必要なものはきっかけだ。
 そう思うトラビスはある日、選挙事務所で働く美人すぎるOL、ベッツイに一目惚れする。

 事務所の外で待ち伏せをしたり、強引にくどくことで彼女とのデートにこぎつける。
 だが、トラビスはデートの初日で彼女をポルノ映画に誘い、彼女を憤慨させてしまい、あっさりと破局してしまう。

 謝罪のために花束を送り、電話を何度もかけるが彼女は二度と彼と会おうとしなかった。
 次のトラビスの関心はまだ少女と言っていい年齢の娼婦アイリスだった。

 彼女が一度だけ自分のタクシーに乗ろうとして女衒らしき男に連れ戻されたことが彼の心に残っていた。
 トラビスは彼女を金で買い、娼婦をやめるように説得するが彼女はやめようとしない。

 聞けば彼女はまだ12歳で家出をして以来、売春をして生計をたてていた。

 しかし、そんな彼女を説得できない彼は、ついに焦燥を実行に移す。
 彼は銃を買い揃え、体を鍛え始めた。
 目的は失恋相手の勤め先の次期大統領候補のバランタインを集会の席でで暗殺することだった。
 しかしモヒカンにサングラスという出で立ちで集会に現れたトラビスは警戒され、あやういところで逃げ去る。
 だが、彼の暴走はとまらない。
 その夜、アイリスのアパートを訪ね、彼女を囲っていた男達、アパートの客を次々に虐殺していったのだ。
 アイリスの悲鳴、続く銃声を聞きつけて、アパートの周囲には次々にパトカーが止まっていく。
 物見高い人々が集まり、物語はここでを終わるのかと思いきや、続きがあった。
 アイリスを囲っていた男達から開放された彼女は実家にもどり、トラビスはそのことでヒーロー扱いされ、新聞に何度も取り上げられるようになる。
 彼女の両親からも感謝の手紙が届く。
 だが、そんな彼にもまた日常がやってくる。
 元通りタクシードライバーとしての毎日を過ごすトラビス。一時は恋愛感情を持ったベッツイも客として扱うようになった。
 今夜も街のネオンがタクシーの窓の外を尾を引いて消え去っていく。
 そのネオンが一瞬醜く歪む。

 END

 

 

 ★レビュー
 おお、一瞬、アイリスを助けるために狂った虐殺したところで終わるのか思いました。
 あそこで終わっていたら、見た甲斐のないただの気の狂った自己顕示欲の強い青年の物語で終わっていただろうな、と思います。
 しかし、この物語はその後、トラビスの虐殺がたまたま非行少女を助けたことから、世間の彼へのバッシングがいっさいなく、彼を英雄に祭り上げられることで、なんともいえない奇妙なハッピーエンドを迎えることになります。


 この物語の不思議なところは、トラビスが殺人を犯したことに対する一巻した社会の寛容さなんですね。
 実はラストの殺人の前に、トラビスは一度、雑貨屋で強盗をしている客を殺しています。
 しかし、店員がトラビスと懇意だったこと、そして強盗を何度もしてきた黒人が憎いあまり、彼の殺人を見逃してくれるのです。


 よく考えると、トラビスはこの物語がはじまる前、ベトナム戦争でもかなりの人間を殺しているはずですね。
 もちろんこの物語でも、彼は殺人を犯し続けている。
 しかし、彼が殺した人間が社会的に見て、「悪い」とみなされたため、彼は常に罪を免れてきているのです。
 もし、この物語で次期大統領候補を殺していたら、彼は殺人犯として逮捕されたかもしれませんが、それに失敗したことから、彼は「助かってしまう」のです。


 物語のラストは彼のいまだ消えやらぬ狂気を表現するために、一瞬ネオンと音楽が不快な乱れを示します。
 一抹の不安を残したまま、物語は幕を閉じるのですが、なんともいえない余韻を残します。
 彼の狂気、つまり世間を見返してやりたい、今の生活から抜け出したい、そんな思いが結局はどこにも届かないまま、真綿に包まれるように日々大きくなっていく、それを象徴するようなラストです。


 そんな外見は寛容、中身は非寛容なアメリカという国。
 その中心であるニューヨークの夜の街。
 バーナード・ハーマンのロマンチックでけだるいサックスが明るくなりきれない、しかし絶望を真綿でくるんでごまかしてしまう明るさを象徴しているようです。
 そもそもトラビスの不眠は、戦争による後遺症なんでしょうね。
 映画ではそのへんをあからさまに描いていないのですが、トラビスの秘められた鬱憤がけっして個人の資質だけではなく、社会全体の責任でもあるかのようにぼんやりと描かれた見事な作品だったと思います。


 あと、忘れてたけど一目みて思い出した、ジョディ・フォスターの少女時代。

 それなりにかわゆいです。
 いまさらですが、ものすごいおひまな人はどうぞ。私は見てよかったです。
 
 次回はアンダーグラウンドで(これまた、ふる!)