読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

12月20日(日)世界の憎み方 ハーモニー(小説)

 

★(ネタバレを含みます 映画未見、小説未読の方はご注意ください)

 

 なんでしょうね。
 テロリストっていうのは、極端から極端へいくものなのでしょうか。
 昨日の「ファイトクラブ」のタイラー・ダーデンしかり。
 このハーモニーの御冷ミアハしかり。


 今回は映画ではなく、原作を読みました。

 この物語を読む目的を「世界の憎み方」にしぼって、2回ほど精読しました。


 ストーリーは以下の通り。


 人類大虐殺が横行した世界ののち、人々は極端な平和社会を実現させます。
 平和の核になっているのが、WATCH MEとい言われるシステム。
 体内監視システムのこのミーを体内に入れることで、体は常に最適化され、病気とは無縁になります。
 ですが、よくあるようにこういうシステムはたいがい全体主義を結びついていて、ただの健康管理アプリではないのですね。
 そのミーをインストールされた人々は社会的リソース(資源)とみなされて、ミアハのいう病気になる権利なる自由は剥奪されます。
 社会は見た目上はユートピアなわけですが、どこかでくすぶる息苦しさから子供達の自殺というのが少なくない数でおきている。


 そういうわけで、いわゆるその監視社会を憎む先鋒がカリスマ美少女ミアハです。
 高校生のときミアハは主人公である霧慧トアンと零下堂キアンというクラスメートとともにこの社会に自殺をすることで反抗しようします。
 ミーをインストした時点で社会的リソースになってしまうので、自殺こそ社会にとってリソースを失うという点で損失なわけです。
 しかし、堅い約束にも関わらずトアンもキアンも生き残り、ミアハだけが死亡します。


 13年後、トアンは日本に舞い戻りキアンの自殺に遭遇します。
 キアンの最後の言葉は「ごめんね、ミアハ」
 時を同じくして、世界中で自殺が多発します。
 WHOの下部組織、螺旋監察事務局の上級監察官であるトアンはキアンの最後の言葉を頼りに集団自殺の謎を解く決意をします。


 ミアハの実家に行くことで、彼女の遺体がバグダッドに検体として引き取られていたことがわかります。
 遺体の引き取り手はトアンの実父、霧慧ヌアザ。
 彼こそ、WACHT MEによる健康監視システムの生みの親でした。
 トアンは実の父を追いかけてバグダットにおりたちますが、そこで聞かされたのは、システムを入れた人間がたった一つのボタンで意識をなくすという驚くべき事実でした。

 死んだふりをして実は生きていたミアハは健康市場社会で意識以外のことがすべて外注されているにもかかわらず、意識だけが残っていることの不条理さ、不合理さをなくしてしまいたいと思いハーモニー計画を実行に移そうとします。
 ハーモニー計画とは、ミーをインストされた人間から争い、迷い、苦悩をなくすために意識を消滅させることです。


 半世紀前に人類大虐殺を経験した老人達が考えたこのハーモニー計画を強引に押し進めるためにミアハが大量集団自殺を引き起こしていたのです。


 ミアハ曰く、意識がなくなれば争いもなくなるじゃないの、という。
 で、ラストは意識が消滅して、わたし、が消えていってしまうんですね。

 

 

 映画を見たときもそうだし、小説も読後がう~ん? なんですよね。

 まあ、私的にはしっくりきてないんですね。
 まず、一つにミアハのテロの動機に共感できない。 
 ミアハが世界をどう憎んだのか、世界の何を憎んだのか、というのはとにかく描写はされています。
 ただ、それをファイトクラブのタイラーと比較したときに、どれだけカリスマ、アジテーターとして、一般民衆の支持を得られるのかな、ってことです。


 感情的に、そうだ! そうだ!っていうのがいまいちない。
 なんていうんでしょうね。


 意識するのがそんな大事なのかよ? っていうのことをミアハは言っているのですが、これは人間としてどうなのか?という道徳的な話ではなくて、人類の存続にかかわるもっともっと重要な問いだと思うのです。

 

 意識というものを、私自身もっと進化の枠組みのなかで理解をしなくてはいけないのですが、ミアハはとにかく意識はいらないと判断したのです。

そして集団自殺が蔓延するために、ある黒幕はハーモニー計画を実行に移すことになる。


 で、わたしが消えて、調和する世界が始まる。
 物語は終わる、という話です。

 

 やっぱり、う~ん、なんですね。
 なんていうかちょっと強引な気がしますね。

 簡単に言っちゃうと「にんげん、なめんな(BYスペック・せぶみ)」
ってなとこでしょうか。


 まあ、印象でしかないのですが、意識ってもっと進化にとって意義があるような気がするんですよね。
 なので、これについてはきちんと自分で消化できるようにこれから勉強します。


 あと、なんだかんだこういう極端なハーモニーって社会が完全に停滞しちゃうと思うんですよ。
 汚い言い方をすれば、生物って争いがあってこそ、進化してきた部分があると思うわけです。
 安定したら最後、発展はないというか。
 イメージとしては、クラークの「都市と星」に出てくるダイアスパーみたいな世界で。

 なので、私にはハーモニーのその後っていうのを想像しちゃいます。
 片方にハーモニー計画があっても、それを完全にしないための予備装置っていうのが、はじめから組み込まれている。
 それも含めて完全な計画というかね。
 はじめからトリックスターを入れないと、社会は終わっちゃうと思うんです。

 ま、マトリックスですね(笑)

 計画された異分子っていうか。


 ハーモニー自体はすごくよくできたミステリー小説であるんですが、理論に偏りすぎというか、理論武装は結構なんですが、なんかそれってほんとかな、っていうのがある。

 つまり、耽美理論なんですよね。
 私、実は、耽美もの大嫌いなんですよ。
 きれいなまま死ぬとか、ありえないと思うし
 なんていうか、せぶみさんに登場してもらうしかないですね。

 人間、なめんな、と。

 それって生きる実感っていうんですかね。
 生物ってしぶといと思うんです。
 もちろん、思うだけじゃだめなので、これから勉強(しつこい
 なんとか抜け道を探そうとするし、それだけのものを生物のメカニズムは宿していると思うのです。
 
 なので、「ハーモニー」に関してはひとつ簡潔した物語としてこれからも堪能したいと思います。
 主にはミアハが憎んだ世界はどんな形をして、どんな方法で復讐しようとしたのか、ユートピアにたいする一人のテロリストの行動を追うつもりで。
 いろいろ聞きたくても、伊藤氏はもうハーモニーの中なので。

 

 あと、これは本当にわかりきったことなのですが、この「ハーモニー」という物語は「虐殺器官」の続きの世界です。

 虐殺器官では、人類が互いに殺し合う混沌とした世界になってしまい、そこから半世紀後がこの「ハーモニー」の舞台なのです。

 地球の中で虐殺が横行するという大惨事がというファンタジーの続きとして、その虐殺をする意識自体を消滅させようという極端から極端なファンタジーは完全に筋が通っています。
 ただ、私はそのファンタジーがやっぱり人間、なめんな、になると思うのです。


 ま、こんなこと言っても、大好きなんですけどね!


 伊藤計劃!!(いわなくてもわかる)

 なんか、まとまらなかったです。